シコシコばかりではダメだ! そして私は出会いを求めた

今回は趣向をかなり変えて、女性との出会いについて、自身の体験談をベースに語っていきたいと思う。私のようにインドア派で毎日シコシコやっている人間だと、女性との出会う機会がほとんどない。
これまでエロ本やAVを語ってきたシコリティ能力だけは高めな私だが、こと三次元相手となると極端に委縮してしまい、本来の実力を出せないことも関係しているだろう。
童貞の青少年のように緊張感が必要以上に大きくなってしまうわけだが、風俗体験はそれなりにあっても、やはり素人童貞という足カセも、万事に対し臆してしまう原因なのかもしれない。そんな私が今回ばかりは脳内エロから離れ、街にくり出そうと決意した。
そろそろ還暦が近い私なので、いまさらという感はあるが、人間いくつになっても女性との新たな出会いはエキサイティングなもの。気持ちの高揚もさることながら、下半身的なカツリョクが若さを保つ秘訣にもなる。
というわけで、腰が重い私はあれこれと理由をつけて自身を奮い立たせる。
とはいえ、いまさら合コンやお見合いパーティーなるものに参加する気力はない。そんな場所で成功をおさめるほどルックスがいいわけではないし、コミュ力もない。
私のように、どちらかというとジトッとしたパーソナリティのオヤジでもマッチングできる可能性が高い出会いはないものかといろいろと調べまわった結果、とある企画を見つけた。
それが、今回話題に出す〝中高年バスツアー〟だ。

簡単に説明すると、異性とのマッチング希望の男女が観光バスに乗り目的地を巡るという、ただそれだけの内容。目的は異性との出会いなので、観光は目的のために準備された舞台とでもいったところだろう。
そして、これが重要なのだが、参加資格が中高年というもの。
20代、30代の血気盛んなお年頃だと、ルックス重視、ノリ重視になり、マッチングを成功したいあまり、結果的に殺伐とした感じになってしまいがちなのだが、中高年にその心配はない。
全員がとても落ち着いていて、必要以上に出会いを求めるわけではなく、ご縁があればお近づきにという程度のものなので、自然と和やかな場が形成されるのではないかと、私は勝手に思っている。
観光は舞台だと書いたが、観光メインで出会いは二の次と、そんな気持ちで臨むからこそ、緊張しいの私としても本来の実力が発揮できるというものだろう。
というわけで、事前の準備段階では私の感触はかなり良い。
あとは実際に申し込み、ツアーに参加するだけだ。
出会い初心者は中高年向けバスツアーを狙え!

そんななか、私が選んだのが、「バスツアー+お散歩コン」なる企画。観光バスで行った先でお散歩するという、なんともユルい内容だ。
「40歳~55歳」「独身」が参加条件となっていて、最初に想定していた年齢よりもすこし若いし、アラ還の私は条件から外れてしまうが、そのそも内容がユルい企画なので、厳密なチェックもないだろうとタカをくくりネットで参加チケットをポチッ。
また、一般的な街コンだと、男性の参加費用が女性の3倍という価格設定が多いが、「女性2500円、男性4500円」と良心的だ。
今回にかぎらず、オクテな私はポチッするまでいつもかなり迷うのだが、今回ばかりはワクワク感のほうが先行しており、アラフォーの美女と手をつないでお散歩するビジュアルが、脳内を占めていた。

ちなみに参加費用の4500円を高いとみるか、それともリーズナブルとみるか意見がわかれるところだろう。激安ピンサロなら、もっと安い金額で精液を放出することができるからだ。
しかし、そもそも出会いとピンサロを同じ土俵で語る時点で感覚が間違っている。
私は、ピンサロが頭に浮かんだことを反省しつつ、ツアーまでのあいだ、不必要なオナニーは避けることを決意した。
そして当日、私は専門学校入学時に叔父さんに買ってもらったスーツに身を包み、いざ出陣。さきに結論から書いてしまうと、とても満足した時間を過ごせた。
具体的に振りかえってみたい。
朝10時、指定された場所に行くと、私の予想よりも多くの参加者がバスの発車を待っている。
定年後と思しき男性もチラホラいて、参加者は20人程度。
バスの入口の前ではガイドさんがいて、参加者の点呼。そして名前入りのプレートをわたされ、首からかけるようにいわれる。プレートには名前と年齢、事前に申告していた趣味が書かれていた。
ちなみに私が書いた趣味は「オーガニック」。
女性ウケしそうと思い、勢いで書いたもののガチ勢にツッコまれると知識がないのがバレてしまう。しかし、そのときはそのとき。私はこれまでの少ない異性体験から、女性は自分の話を聞いて欲しいものだとほぼ断定している。
つまり、私自身のことを話すよりも、聞き上手に徹したほうが女性ウケはいい。ニワカのオーガニック趣味を隠せるだろう。
しょこたん似40代のアイドル顔の女性とお近づきに!

そしてバスの車内に乗り込むのだが、席はあらかじめ決められていた。隣り合って座ることはなく、2シートにひとりずつ。男女がバランスよく配置されている。
実はこの席順が私に幸いした。私の席の隣、通路を隔てた先のシートに座っていたのが40代前半と思しき女性。参加者をざっと見まわしたところ、女性のなかではいちばん若く見えるビジュアルだ。
ちなみに全体の年齢層だが、女性陣の大半は50代半ば以降というルックスで、一方の男性陣は、それよりもやや年齢が高い印象だった。「40歳~55歳」という条件はいったい? と思ってしまうが、こんなバスツアーにも高齢化の波が押し寄せているようだ。
というか、主催者も参加者もそのあたりに無頓着というかとてもユルい。
逆にいえば、誰でも参加しやすいというところか。
それはさておき、私はこの40代前半女性にターゲットをしぼる。女性陣をざっと見わたしたところ、この女性くらいしか狙い目はいないと悟ったからだ。
AVの世界では熟女や人妻が人気のジャンルときくが、実際の熟女はそのへんのオバハンにしか見えない。この彼女は別にしても、そのことをあらためて実感してしまう。
というわけで、すこしでも若く、すこしでもビジュアルの良い女性を欲するのは男の本能ではないだろうか。キンタマが正常に働いている証拠ともいえるだろう。
そんな自信も背景にあったのか、バスが目的地に到着したあと、私はその女性に自分から話しかける。
ちなみに目的地はとある博物館。なんとも地味な選択だが、そんなことはどうでもいい。博物館はしょせんは舞台設定に過ぎない。
バスが停車したのは、博物館からすこし離れた場所。そこから博物館を目指して参加者が歩いていくようだ。つまりそれが「お散歩」だった。といっても、博物館は大きな公園に隣接しており、普通の道を歩くよりもはるかに「お散歩」感はある。
それはいいとして、私の行動は素早かった。先に書いたように、例の女性がバスから降りるやいなや、横に並びながら話しかけた。

自分の話は最小限にとどめ相手の話を聞く姿勢が大切

「いやあ、今日はいい天気で良かったですね」
20代や30代の男女が集まる婚活会場のように、緊張感でピリピリした空気はないものの、モタモタしているとライバルに先を越されてしまう。
書いてなかったが、バスツアーの時期は6月。梅雨で長雨が続いていたが、当日は雲はあったものの天気は良かった。
「そうですね」
彼女は前を向いたまま私に応える。博物館へ続く道にアジサイの花が満開になっていた。
キレイな花をいっしょに眺めるとお互いの距離が縮まると思った私は、彼女が立ち止まりアジサイを写真におさめる間、その背後からアジサイと同時に彼女の後ろ姿を鑑賞。
「じつは私、誕生日が6月でして、アジサイには親近感があるんですよ」
「ああ、そうなんですね」
会話を書いてみると彼女は淡々と受け答えしているように思われるかもしれない。しかし、声の抑揚というかトーンは、とくに興味がないという感じではなかった。少なくとも私にはそう見えた。

「それはそうと、アジサイには毒があるという話ですよ」
「え? 毒が?」
「なんでも、あの有名な帝銀事件で使われたかもしれないといわれている青酸配糖体とか、アルカロイドとかみたいですけど」
瞬間、私はしまった! と思い後悔する。このような意味不明なウンチクはウザがられるばかりか、ハラスメントと受けとられかねない。
「え! あ、写真撮られます?」
私が彼女のすぐ背後からウンチクを話したため、彼女がびっくりしてこちらを振りかえる。
そのとき私がスマホをかまえていたので、アジサイを撮影するつもりだと思ったのだろう。しかし、私はこのとき、アジサイの毒がなんなのかを調べていただけだった。
「いや、いいんです。それにしても、アジサイを撮る美女。絵になりますね」
若いときの私は、こんな恥ずかしいセリフは到底出てこなかったのだが、年齢を重ねるたびにふてぶてしくなり、褒めてみて喜ばれたら儲けものという感覚だった。
彼女はそれに対し、とくに反応するわけでもなかったが、博物館への道をいっしょに歩いてくれた。

感触は悪くない……次につながる期待を残しつつツアー終了

「林田さんは、なんのお仕事をされてるんですか?」
首から下げたネームプレートを確認して名前を呼んでくれたことが嬉しく、私は舞い上がってしまう。
思えば、彼女は、タレントのしょこたんを15歳くらい歳をとらせた感じのビジュアルで、若いときはとてもキュートだったろう。いうなればアイドル顔だ。
「派遣です。あちこち行かされるんですが、最近は地球の表面に立ってることが多いですかね」
「はあ……」
「いや、あの、駐車場の誘導です」
「ああ、そういうことですか」
「ははは、これからの季節は大変です。それより、田端さんはお仕事はなにを?」
私の話に深入りしたところで面白い話題はない。私は彼女のネームプレートを確認しながらたずねる。
「仕事は、工場で事務をやってます。山奥に工場があって、私もその近くに住んでるので、なかなかこうして下界に降りてくることがないんですよ」
「下界?」
「工場の社員たちは、街に行くことをそう呼んでますね(笑)。工場が山の上にあるんです」
「そうですか。私のヘンな言い回しが移ったのかと思いました」
そういう感じで、私としては意気投合したように思ったが、彼女のほうはどうだったか。

ところで、博物館を出たあとは、ふたたびバスに乗り、最初の集合場所に戻り解散となる。
お散歩のあとは、特別書くようなことはないのだが、帰りのバスのなかで、彼女がタイ料理好きということがわかる。
プレートの趣味蘭が空白だったので気になっていたのだが、タイ料理ときいて私のテンションはまた上がった。
というのも私は、タイの若い娘たちとイイことをしたいという邪な気持ちから、以前にタイ語教室に通っていたことがあるからだ。そんなこともあって、彼女とはしばしタイ料理の話題で盛り上がった。
タイ教室に通ったのがここにきて生きてきた。人生どう転ぶかわからない。通っていたのは10年以上昔ということを思うと10年後の伏線回収という感じだろうか。

最後に彼女とは連絡先を交換して別れた。また会いたいと思う一方、連絡する勇気が出ず、なんとなくシコシコな日常を過ごしてしまっている。