真剣!性科学シリーズ 精子の行方に思いを馳せてみよう ~あのときの精子はどうしてるだろうか~

女性とハート
-PR-
-PR-

深くて長いお付き合い!〝精子〟とはいったい何なのか?

一日に億単位の精子があたらしく生まれている
一日に億単位の精子があたらしく生まれている

今回はいつもとすこし趣向を変えて、精子を〝科学〟してみようと思う。毎日精子と対面しているという若い人もいるだろう。

中高年の昭和世代もかつては、精子との対面が頻繁だったと振りかえると、私たちと精子はとても深い関係だとあらためて思う。

そんなふうに、私たちと深い関係の精子だが、調べてみるととても興味深い。

ここからはすこし小難しい話になってしまうのだが、しばしお付き合い願いたい。

科学的なことが出てくるので、とっつきにくいと思われた方は、次の章から読んでいただいてもまったく問題はない。

では始めよう。

もともと、精巣のなかに精子がいきなり存在しているわけではない。

いろいろなプロセスを経て精子となる。

胎児の段階までさかのぼってみよう。

精子の元は「始原生殖細胞」と呼ばれるもの。この段階ではまだ精子になるか卵になるかは未確定なのだが、「始原生殖細胞」が男の子のなかに生じると、将来精巣になる場所に移動。そこで男性ホルモンにさらされることで「精原細胞」という、精子の元になる細胞に分化する。

その後、「精原細胞」は体細胞分裂(クローンをつくる分裂)を繰り返し数を増やす。ここまではまだ胎児の段階で、母体のなかにいる。

そして誕生(出産)となるのだが、二次性徴にさしかかるまでは、精巣のなかには精子の元になる「精原細胞」が存在している状態だ。

やがて思春期になり二次性徴がすすむと、「精原細胞」が男性ホルモンにさらされることで成長し、「一次精母細胞」というものになる。

そして、この「一次精母細胞」が減数分裂をしていく。高校生物のおさらいになるが、「減数分裂」とは、ここでは卵子と結び付くための準備をする分裂のこと。

二度の減数分裂を繰り返した結果、ひとつの「一次精母細胞」から、四つの「精細胞」が生まれる。

そして「精細胞」の形が変わり、ここでやっと「精子」となる。ちなみに、形を変えることを〝変態〟という。

どうして「精細胞」が形を変えるのかというと、「精細胞」は運動性を持っていないためだ。つまり、「精子」に〝変態〟することで運動性を獲得する。

精子は猛烈な生存競争を経てはじめて卵子に到達する
精子は猛烈な生存競争を経てはじめて卵子に到達する

というわけで、精巣のなかにある精子がどういう過程を経て誕生したかに思いをめぐらせると、精子1個1個に愛着が出てくるから不思議だ。

さて、精子誕生のおさらいをしたうえで、ここからは卵子と出会うまでの道のりをみていきたい。

ここまでと同じく、〝科学的〟なことを書いても退屈なだけなので、ここからは小説風に展開していこうと思う。

主人公はもちろん精子だ。そして単なる精子だと読み手が感情移入できず、お話が殺風景に映ってしまう。

そこで私は精子に人格を持たせることにした。私が最初に就職した年に、男の子の名前ランキングで1位を獲得した「マコト」にしようと思う。

そしてここからは、精子・マコトの物語だ。マコトが卵子と出会う過程を生温かい目で見守ってもらいたいと願っている。

その前に、前提を書いておくと、精巣内にいたマコトは、もちろんひとりではない。「一次精母細胞」から減数分裂で4個の精子が生まれると書いたが、いうなれば四人兄弟ということになる。

もちろん、ほかの「一次精母細胞」から生じた精子も大量に存在しているわけで、それに加えて、毎日1億2千万個の精子があらたに生まれているとのこと。

もしも、ひとつひとつ名前を付けていると、女性をふくめた日本人全員の名前をあてがわなければならない。

そのくらい数が多いということなのだが、子供の数を考えると、日本だと少子化でふたりいれば多いほうだろう。

つまり受精する回数は極端に少ない。マコトがいかに過酷な生存競争にさらされているかということだろう。

卵子を求めて精巣から飛び出した精子・マコトの物語

卵子に到達する精子はほんのひと握り
卵子に到達する精子はほんのひと握り

さて、ここからはいよいよ、マコトの成長物語に入っていきたい。小説風のお話を終えたあとで、また私が登場してまとめを書いていきたいと思っている。

~~~~~~『精子・マコトの大冒険』 作・林田京太~~~~~~

マコトは地震のような大きな地響きを感じて目を覚ました。

「なんだ!」「なにが起こったんだ?」「みんな大丈夫か?」

同時に、マコトのまわりで声がする。やはり大揺れがあって、マコトの前方にいた仲間が放出されたのが三日前。

それまでは一週間周期で大揺れが起きていたから、こんなにはやく起きるとは、マコト含めまわりの兄弟たちも予想外だったようだ。

「マコト! 今回の射精でいよいよデビューだな」

すぐ隣にいた幼馴染の仲間がマコトに話しかける。

マコトの前方には約1億個の精子たちが漂っているため、たしかに今回はマコトも放出されるだろう。

マコトは、三日前に放出された精子の仲間から、便りがあったことを思い出した。

「マコト、先に世に出て行った先輩として言わしてもらうけどな。放出されたあと、すぐに卵子と出会うわけじゃないんだ。気が遠くなるほど長い距離を自力で進まなきゃいけない。卵子に到達したときにはもうボロボロさ。鮭の川のぼりみたいなもんだ」

マコトは思う。「大丈夫、体力には自信がある。毎日、ほかの精子よりも長い距離を泳いで練習してたから」

マコトは同時に、身体に力がみなぎるのを感じていた。

「しかしなあマコト、じつはもっと大変なことがあって、それは放出される場所が、かならずしも卵子がいるところじゃないってことなんだ」

マコトは、そのあとに綴られていた内容の意味がわからなかった。

「コンドームっていう避妊具があってさあ。膣内に飛び出そうとしている精子たちを一網打尽に閉じ込めてしまう役割をするんだ。これに引っかかると、卵子に到達できずにそのまま捨てられる運命さ。せっかく飛び出したのに情けないことだ」

マコトが身震いする。これから出ていく先は膣内なのか、それともコンドームと呼ばれる罠の中なのか。もしも罠の中だった場合、自信のある体力がムダになってしまう。

精子が放出されるのは必ずしもセックス時だけとは限らない
精子が放出されるのは必ずしもセックス時だけとは限らない

放出された先はまさかのあの場所!精子・マコトはそれでも動きまわる

精子たちが目指すのは魅力的な女性の卵子
精子たちが目指すのは魅力的な女性の卵子

そう思っているうちに精巣全体がまた激しく揺れはじめた。

「いよいよ出発だ!」「オレとお前はこれからはライバルだ」

「卵巣のなかでまた会おう!」「はやく卵子に突入したくてウズウズするぜ!」

精子たちの勇ましい声が精巣内に響く。

マコトも足元がおぼつかなくなってくる。

「来た!」

誰かが大きく叫ぶと同時に、マコトの身体に背後から強い力が加わる。

とてつもなく大きなホースで背中に水をかけられているような感覚だ。

マコトは射精が近いことを知り、両手を握りしめた。

いよいよ放出されるという段階になって、後ろのほうから声が聞こえてくる。

「精巣から出て行ったとしても膣内で泳げるとはかぎらないらしいぞ」

「なんだって! 主人が失敗したってことか?」

「ケツの穴に放出したとかな」

「いや、そうじゃなくて、全然違う場所らしい」

マコトよりも2日後に生まれた精子たちが、はじめて世に出ていく不安からかそんなことを話し合っていた。

そしてついに射精のときがやってくる。

マコトは、できるだけ遠くに飛んでいけるよう、流線形の身体を、さらに尖らせる姿勢をキープして放出を待つ。

「うわあ!」

誰かが叫ぶのと、マコトの身体がものすごいスピードで押し流されるのがほぼ同時だった。

マコトは精巣のなかから出て、キンタマに入り、そこから一気にチンポに向かう。記録係がいないので正確な時間はわからない。しかし数秒といった感覚だ。

当たり前だが、チンポのなかは狭い。乗車率400パーセントは超えている。押しつぶされそうになりながらも、マコトはいい席をキープ。そこから一気に外の世界にダイブした。

精子の〝思い〟とは別に、中出しに慎重になる女性は多い
精子の〝思い〟とは別に、中出しに慎重になる女性は多い

「あ! 何だあれは?」

いっしょに放出された精子が声をあげる。マコトが最初に抱いた感想は「眩しい」だった。

このときはまだ精液全体が空間を飛んでいる途中で着地はしておらず、ゆえに、精子たちのなかから戸惑いの声があがる。

マコトたちがダイブしようとしている空間は、膣内ではなさそうだし、ウワサに聞いたコンドームのなかでもなさそうだった。

「やばい! あの白い紙はもしかして!」

「ティッシュだ。となりにエロ本がある。しまった! 無駄死にだ!」

悲鳴をあげた者もいた。

マコトも、何が起きたのか悟った。オナニーだ。もちろん膣内に放出されたわけではなかった。

「なんでこんなことに……」

ティッシュのなかに放出された仲間たちは、無念な思いを口々に語り、そして動きが遅くなっていく。

体力に自信があったマコトは、まだ動きまわっていたが、行き着く卵子はもちろん存在していないため、同じところをグルグルと回るだけだった。

そのうち、多くの精子の運動が遅くなってくる。

「オレの卵子はどこだ!」

叫びながら動かなくなり、眠ってしまう精子も少なくなかった。

「あれ? なんだ、マンコがあるじゃないか」

まだ意識のあったマコトは、エロ本に掲載された薄いモザイクが入ったマンコを目にして呟いた。

「マンコだ! ここは膣内のすぐ近くだったんだ」

そしてなんとかエロ本の膣内に入り込もうとするところで動けなくなる。

エロ本のマンコに頭をつっ込み、まるで受精を成し遂げたかのような表情を浮かべていた。

「良かった、無駄死にじゃなかった。こうして卵子にたどり着いたことを後輩たちに報告だ」

そう呟きながら、やがて意識をなくしていった。

そんなマコトの雄姿が、主人の目にも入った。

「あ! しまった! エロ本にちょっと飛び散っちゃたよ。またオカズにしようと思ってたのに……」

        完

精子の立場になり飛び散ってしまう現象を解説!?

莫大な数の精子が卵巣に到達できずに寿命を終えてしまう
莫大な数の精子が卵巣に到達できずに寿命を終えてしまう

さて、精子・マコトの冒険を楽しんでもらった。思えば精子は不思議な存在だ。オナニーしたときに、床やエロ本についてしまうと汚いと思う一方で、なんとなく親近感がある。

また、妄想の精子小説の内容にひきつけていうと、精子は膣内に発射されるのがもっとも価値が高い。本来のあり方だからだ。

なかでも卵子と受精を成し遂げた精子はカーストの最上位といえるだろう。

続く順位を考えてみると、膣内のなかでのコンドーム射精だろうか。膣内で泳ぐことはできないが、皮一枚隔てた向こうには目的地があるし、セックスという行為での放出でもある。

一方、オナニーは、どうしてもカースト最下位に位置づけられてしまうだろう。

オナニー自体はとても価値があると私は思っているが、精子の立場になってみると、オナニーは無駄打ちとしかいえない。

ちなみに、いちどの射精で2~4億個の精子が放出されるといわれている。

中出しセックスで妊娠したことに対して、よく百発百中などと表現することがある。

しかしよく考えてみれば、精子1個と卵子1個ではなくて、精子2~4億個と卵子1個。

広い的に、億単位のボールを投げれば、どれかは当たるという世界だと思うと、百発百中という表現にツッコミを入れたくなってくる。

それはさておき、たとえばオナニーで射精したとき、精液の一部が思っていたよりも飛んだり、または別方向に飛び散ったりすることがある。

結果、エロ本を汚したり、床を汚したり、手に付いたりする。

前項の小説の話を思い出し、マコトのような体力自慢の精子が、運動量が大き過ぎたために勢いあまって飛び散ったと考えると、しんみりしながらも冷静になり掃除をすることができるのではないだろうか。

タイトルとURLをコピーしました